【要約】影響力の武器【書評】
タイトル | 影響力の武器 |
著者 | ロバート・B・チャルディーニ |
評価 | (4 / 5) |
「影響力」は6つの要因があると解説している本です。『影響力の武器』は、世界累計300万部以上売れている大ベストセラー。
第二版発売時から何度も何度も読み返し、コミュニケーションや交渉の際に役立てています。
ビジネス・プライベート様々なコミュニケーションの場面で応用できる知識を得ることができました。
目次
’
「影響力の武器」を読むべき人
コミュニケーションに何かしらの課題をお持ちの方は、改善のキッカケになると思います。ビジネス、プライベートどちらにも参考になる一冊です。
読むべき人
- 人を動かすことに課題感を持っているマネージャー
- マーケティング担当者
- 彼氏彼女が欲しい人
- 自分の影響力に課題を感じている人
要約
人間行動を導く基本的な心理学の以下6つの原理によって影響力が発揮される。
- 返報性(人は恩返ししないとけないと思う)
- コミットメントと一貫性(人は決めたことに固執する)
- 社会的証明(みんなが良いと言うなら良いに決まってる)
- 好意(好きな人の意見は納得感あるよね)
- 権威(偉い人が言うなら間違いない)
- 希少性(数が少ない=レア!)
著者のロバート・B・チャルディーニさんについて
ロバート・B・チャルディーニさん
ノースカロライナ大学で社会心理学の大学院に進み、博士号を取得。1970年6月、コロンビア大学で社会心理学の大学院へ進まれました。その後、オハイオ州立大学、カリフォルニア大学、アネンバーグコミュニケーションスクール、スタンフォード大学大学院ビジネススクールで客員研究員の任命されました。現在、アリゾナ州立大学の心理学とマーケティングの名誉教授をされています。
300万部以上を売り上げ、30の言語に翻訳されている『影響力の武器』によって一躍有名になられました。
ちなみに同じ本を別の出版社が翻訳を行っている「影響力の正体」という書籍があります。翻訳本特有の癖みたいなものがありますので、こちらの翻訳の方が読みやすいという方もいます。私は本は「影響力の武器」、Kindleは「影響力の正体」と使い分けて読んでいます。
「影響力の武器」のここがイイ!
人間行動を導く、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性の6つの原理によって影響力を構成する特徴を章立てて書かれており読みやすいです。それぞれ6つの影響力の武器を解説していきます。
影響力の武器①:返報性
人は、何かをしてもらったらお礼に何かをしなければならないと考えます。
このような一説がありました。
他者の要請を受け入れるか否かの決定は、しばしば、返報性のルールによって影響を受ける。承諾誘導の専門家が好んで使う儲けの手口の一つに、最初から何かを与えておいて、相手からお返しを求めるという方法がある。
意図的にお返しを求めるようなやり方は、どこか詐欺まがいな香りがしてきますが、無意識下の中で、または善意の中でメリットを提供していくようなライフスタイルは、徳を積むことができると思います。
例えば、旅行や帰省のお土産を配るという文化は、まさにこの「お返し」の意味合いが含まれているはずです。お返しが感謝だけでも、関係が良好になるというメリットを考えると「お土産」は大変便利な返報性の使い方かなと思います。
また、本書では人に何かしてもらったら何か返さないと「不快」になるという表現を使っていて、面白いなと思いました。
言い換えると「義務」のように感じてしまっているということです。
返報性の活かし方
- 見返りを考えず積極的に与えまくる!
- 他者貢献の精神で積極的に人のために動く!働く!
影響力の武器②:コミットメントと一貫性
「一貫性を保とうとする圧力を受ける」心理状況になること。
特に「自分で決めさせる」ことによって意図的に「自分で決めたことだから間違っていない」という整合性をとろうとします。この力は絶大です。自分で決めた感が強いほど圧力が強くなっていきます。
以下の一説は一貫性を保つことによって得られる要素が書かれています。
ほとんどの人には、自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたい、あるいは、他人にそう見られたいという欲求があることを心理学者はずっと前から認識していた。この欲求は3つの要素によってもたらされる。第一に、一貫性を保つことによって、社会から高い評価を受ける。第二に、公的なイメージに及ぼす影響は別にしても、一貫性のある行為は、一般的に日常生活にとって有益である。第三に、一貫性を志向することによって、複雑な現代生活をうまくすり抜ける貴重な簡便方略が得られる。
社会から高い評価を受けることができ、日常生活にとって有益で、複雑な現代生活をうまくすり抜けることができると。
例えば、友達のAさんが「今度日頃のお礼に何かプレゼントするよ」と言ってくれたとします。すると私たちは「心遣いができるいいやつだ」とたったこれだけで、人間性が高い人と評価を得やすい状態となります。
しかし、Aさんが「やっぱりプレゼントするのをやめよう」と言ってきたらどうでしょう?私たちは「だったら最初から期待させるなよ」と評価は逆に下がってしまいますし、Aさんも残念に思われる想像ができるはずです。
そして、プレゼントあげると言われてプレゼントしてくれなかった経験は皆さんにはありますか?おそらくないと思います。
なぜなら、公言すると引くに引けない状況になるからです。
コミットメントと一貫性の活かし方
- 目標を公言することで目標達成の可能性を上げる
- 目標を公言させることで部下の目標達成の支援を行う
- アンケートの回答を「好き」に誘導し「好き」と書いた事実をつくることで「好き」に目をむけてもらう
影響力の武器③:社会的証明
周囲の動きに同調したくなる気持ちが行動に影響すること。
以下の一説には社会的証明が活きる状況が書かれています。
社会的証明は二つの状況において最も強い影響力を持つ。一つは不確かさである。人は、自分が確信をもてないとき、あるいは状況が曖昧なとき、他の人びとの行動に注意を向け、それを正しいものとして受け入れようとする。たとえば、状況が明確な緊急時よりも曖昧な状況における方が、 援助をするか否かについて行う傍観者の決定は他の傍観者の行動に大きく影響される。社会的証明 が強い力を発揮する第二の条件は類似性である。すなわち、人は自分と似た他者のリードに従う傾向がある。
不確かさと自分と似ている人の評価によって影響力が変わってくると。
例えば、ママリは社会的証明を上手に活用しています。「ママ」という今まで体験したことのない不安だらけで不確かな状況の中、「ママ」という似たもの同士(一緒のグループ)が育児に関して相談しあったりしています。誰かはわからないけれど「不確か」な状況の中「自分と似ている人」の評価なので、参考にしてしまいます。
社会的証明の活かし方
- クチコミを利用し、「周囲が良いと言っている」ことを共有することで好印象の強度を上げる
- フォロワー数を伸ばす。(フォロー=ポジティブなアクション→ポジティブが多い=みんな良いと思っているからこの人は良い人だろう)
影響力の武器④:好意
好意を感じている人からの頼み事は受け入れる傾向にあるということ。
身体的魅力はハロー効果を生じさせ、才能や親切さや知性など他の特性についての評価を高める。その結果、魅力的な人の方が自分 の要求を呑ませたり他者の態度を変化させる際の影響力が強い。
私たちは自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対してはあまり考えずにイエスと言う傾向が強い。
「見た目が良い」「自分と似ている」ことが好意による影響力を高める要因となるようです。
見た目がいいは芸能人の発言に注意がいくのはみなさん実感としてあるのではないでしょうか?
努力でも向上できます。よれよれのスーツとボロボロの革靴を履いている無精髭を生やした営業マンと、自分のサイズにあったスーツを小綺麗な着こなしている営業マン、どちらを信用しますか?ということです。
また、自分と似ている人(似ていると感じた人)の話も素直に聞く傾向があります。自分を「信頼できない人間」と思う人は少ないので。
好意の活かし方
- 身だしなみに気を使い、第一印象に好意を持ってもらい継続的に良い印象を抱いてもらう
- 相手に共感し、自分に考え方が似ているを感じてもらうコミュニケーションを円滑にする
影響力の武器⑤:権威
権力者(権力があると思う人)の指示や命令を受けると、従う事が自分の利益になると感じること。
権力には三種類のシンボルがあるとのこと。
権威者に対して自動的に反応する場合、その実体にではなく権威の単なるシンボルに反応してしまう傾向がある。この点に関して効果のあることが実験で明らかにされている三種類のシンボル は、肩書き、服装、そして装飾品である。
服装、装飾品とは意外です。この本の第一版は1991年の発行ですので、30年前の世間の感覚なので、今の時代にあっているかどうかは一度考え直した方が良いかもしれません。
ただし、肩書きへの反応は実感があるのではないでしょうか?私たちは社長や起業家に従順になりがちです。
権威の活かし方
- 社長になったり肩書きを身につけ発言力を高める
- 権力があると感じる人の要素を分析し、権力があるように振る舞う。
影響力の武器⑥:希少性
人は手に入りにくい状態のものが貴重であると考えるということ。
よく体験する「数量限定」は典型例。量の他にも時間制限(12時までのご注文で送料無料!など)を設けることで、同様の効果を生み出すことができます。
希少性の原理が効果をあげる理由は二つあるとのこと。
一つ目は、手にすることが難しい=貴重と感じる反応。モノでも経験でも対象になる。
二つ目は、手に入りにくい=自由をがないと感じる反応。自由を失った状態を解消するために反応する。
また、希少性は二つの最適条件があると書かれています。
希少性の原理は、二つの最適条件のもとで最もよく適用できると思われる。第一に、希少なものの価値は、それが新たに希少なものとなったときに一層高まる。すなわち、すでに制限されている ものよりも、新たに制限されるようになったものの方に、より価値が置かれる。第二に、私たちは、他人と競い合っているときに、希少性の高い物に最も引きつけられる。
つまり、新しいもの、競いあっている状態が希少性が上がる要因となるということです。iPhoneの発売タイミングが一番わかりやすいのではないでしょうか?新しいiPhone(新しいもの)が早く頼まないと他の人に渡り(競い合っている)手に入れられない希少性です。
希少性の活かし方
- ガッつきたい時こそ「もったいぶる」ことを意識する。ビジネスもプライベートも。
- 忙しいを演じ(または実際に忙しくなり)、時間をもらうことが貴重と感じてもらえるようにする
いかがでしたでしょうか?実際に体験したことがある今まで言語化できていなかった影響力について、イメージしやすく腹落ちしやすく、さすがベストセラーという内容でした。